2026年10月13日
部下の育成に疲れた営業部長へ|研修を受けさせても成果が出ない本当の理由

「自分が若いころに教わったように、部下にも教えているつもりなのに、なぜか育たない」
「研修にも出した。でも、現場に戻ると元どおり」
「正直、もう疲れました」
営業部長や経営者の方とお話ししていると、こうした本音を打ち明けていただくことがよくあります。
先にお伝えしておきたいことがあります。
部下が育たないのは、あなたの教え方に問題があるからではありません。
部下の育成が「部長一人の頑張り」に頼る形になっていることが、本当の原因です。
この記事では、日本IBMで25年間、大手企業向けの営業をしてきた私の経験から、営業部長が育成に疲れてしまう理由と、そこから抜け出すための考え方をお伝えします。
営業部長が「育成に疲れる」3つの理由
🔹 1. 自分の成功体験しか、教える材料がない
多くの営業部長は、プレイヤーとして成果を出したからこそ、今の立場にいます。ところが、その成功は「自分のやり方」で手にしたものです。
自分にとっては当たり前のことほど、言葉にするのは難しいものです。「なんでこれができないんだろう」と感じるたびに、教える側も教わる側も少しずつ疲れていきます。
🔹 2. 毎日の数字に追われ、育成の時間が残らない
部長自身にも数字の責任があります。目の前の案件、会議、報告に追われるなかで、部下一人ひとりと向き合う時間は、どうしても後回しになります。
結果として、育成は「気づいたときに、気づいたことを言う」形になります。言われる側から見れば、毎回言うことが違うように感じてしまいます。
🔹 3. 研修に出しても、現場で続く仕組みがない
「それなら外の研修に任せよう」と考えるのは自然なことです。ただ、研究によると、研修やセミナーで学んだことの87%は、実務でフォローしなければ忘れられてしまうと言われています。
研修の翌週から、また部長の「気づいたときに言う」育成に戻る。これでは、研修の効果も部長の努力も、どちらも報われません。
IBMに「トップ営業」に頼る文化がなかった
私はもともと証券会社の営業で、IBMに転職したときは法人向けの提案営業はまったくの未経験でした。
年下の新入社員より成果が出ず、「自分はこの会社では通用しないのではないか」と何度も思いました。
それでも25年間で、グローバルのトップセールスに選ばれるまでになれました。
才能のおかげではありません。
IBMの育成の「仕組み」に、愚直に従い続けた結果です。
IBMでは、育成は部長一人の仕事ではありませんでした。
入社研修:営業の新入社員は8か月間、製品をほとんど教わらず、お客様の業界や経営課題を考える力を徹底的に鍛えられます。
毎週の営業会議:「いつ受注できるか」だけでなく、「この提案の価値は何か」「お客様の本当の課題は何か」を上司が問いかけ、営業自身に考えさせます。
四半期に一度のアカウントプラン(APS):お客様ごとに営業とエンジニアが集まり、課題と解決策、次の一手をチー ムで考えます。25年間、これが省略されたのを一度も見たことがありません。
こうした場で、部下は上司に「答え」を聞きに行くのではなく、「相談」に行きます。
上司は問いかけとアドバイスで一緒に考えますが、結論を出すのはあくまで部下本人です。
自分で出した結論だから、部下は本気で動きます。
そして次の案件では、上司に聞く前に自分で考えるようになります。
疲れから抜け出すための3つの視点
🔹 視点1:問いかけで考えさせ、アドバイスで「目から鱗」を届ける
最初から答えを教えると、部下は次も答えを聞きに来ます。教える側の負担は、いつまでも減りません。
IBMの営業会議では、上司はまず問いを投げかけていました。
この提案で、お客様は何がうれしいのか
なぜお客様は「今」これを必要としているのか
他社ではなく、うちを選ぶ理由は何か
この3つを毎週聞くだけでも、部 下は「聞かれる前に考えておこう」と動き始めます。
ただし、問いかけるだけでは部下は迷子になります。部下が自分の頭で考え抜いたあとに、経験に裏打ちされたアドバイスをひとこと添える。すると「そういう見方があったのか」と目から鱗が落ちる瞬間が生まれます。
自分で考えたからこそ、アドバイスが深く残ります。問いかけで考えさせ、アドバイスで視野を広げる。 この順番が、部下が自分で動けるようになる近道です。
🔹 視点2:「人」ではなく「場」を設計する
部長が一人ひとりに張り付く育成には、限界があります。代わりに、毎週・毎月決まって考える「場」をつくることに力を注ぎます。
場があれば、部長が忙しい週でも育成は止まりません。部下同士で学び合うこともできるようになります。
🔹 視点3:一人で抱えず、外の力を「伴走」で使う
研修会社やコンサルタントに頼んでも成果が出なかった、という声もよく聞きます。研修は「学ぶ日」をつくりますが、学んだことを現場で使い続ける「場」までは用意してくれないことが多いからです。
育成に疲れてしまったときは、研修で終わらせず、現場の会議や実際の案件にまで一緒に入ってくれる「伴走型」の支援を選ぶのも一つの方法です。
実際に起きた変化
IBMで実践していたコーチングの型を、独立後にあるお客様で取り入れたときのことです。
対象は、営業経験わず か6か月の20代の女性でした。週1回1時間の個別コーチングを2か月間続けました。そのなかで、会社から指示されていた「即決クロージング」をやめ、お客様の課題を丁寧に聞いて提案する営業に切り替えました。
それまで一度も売上目標を達成できなかった彼女が、2か月で目標の3倍を達成しました。変わったのは才能ではなく、考え方の型と動き方です。
ほかにも、伴走支援を通じて次のような変化が生まれています。
若手営業が1億円の案件をつくり、3か月で成約
仕組みづくりと伴走で、組織全体の月間契約数が3倍
エンジニアが主導する提案で、10億円規模の大型案件が生まれた
まとめ:部下の育成は、部長一人で背負うものではない
部下が育たないのは、部長の教え方の問題ではなく、育成が「個人の頑張り」に頼っているから
研修で学んだことの87%は、現場でのフォローがなければ忘れられる
問いかけで考えさせ、アドバイスで「目から鱗」を届ける。そして「人」より「場」を設計する
疲れたときは、現場まで一緒に入る「伴走」で外の力を使う
若いころに、良い上司や良い仕組みのもとで鍛えられた経験がある方ほど、「同じように部下を育てたいのに、できない」ともどかしく感じていらっしゃるのではないでしょうか。その経験は、仕組みにすれば必ず部下に引き継げます。
あなたの営業組織の育成を、一歩まえへ
N.Kナーツ(逆算提案研究所)では、元IBMの営業メソッドをもとに、研修で終わらせない伴走型の営業人材育成をご支援しています。週次の営業会議への参加、提案書のコーチング、アカウントプランの運用まで、現場に入って一緒に進めます。
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