2026年5月8日
常夏の南国でコインランドリーに人が集まる理由〜潜在ニーズを掘り起こす提案力の磨き方〜

常夏の南国で、乾燥機は売れるでしょうか。
直感的に「売れない」と思う方がほとんどではないかと思います。
「洗濯物は外に干しておけば乾く。わざわざ乾燥機は必要ない」というのは、ごく自然な考え方です。
しかし現実は違います。そしてその「なぜ」を知るためには、現地に行くしかありませんでした。
この記事では、フィリピンでの体験から得た「潜在ニーズの掘り起こし方」と、AIが普及するこれからの時代に提案力を高めるための考え方をお伝えします。
「常識」が潜在ニーズを隠してしまう
営業やエンジニアが提案活動を行うとき、お客様から要望を聞いて提案するのは基本です。
しかし、お客様が言葉にできていないニーズ、つまり「潜在ニーズ」を掘り起こすには、別の視点が必要になります。
「南国に乾燥機は要らない」という思い込みは、提案する側の常識から生まれています。
この常識が先にあると、潜在ニーズを探そうという発想自体が生まれません。
IBMで25年間、法人営業として1,500件以上の案件に携わってきました。その中で実感してきたのは、「提案側の思い込みが、お客様の潜在ニーズを見えなくする」という現実です。
優れた提案とは、お客様が言葉にできていない課題を仮説として引き出し、「そう、それが欲しかった」と言っていただけるものです。
フィリピンで目撃した「コインランドリー」
先日、フィリピンを訪問したときのことです。夏かつ乾季の時期でしたが、その日は半日ほど雨が降り続けました。
雨が止んだのでトライシクル(フィリピンのバイクタクシー)で外に出ると、数名の人が集まっているのが目に入りました。
なんと、コインランドリーで洗濯物を乾かしていたのです。
「乾季なのに、なぜ?」と思いました。
しかし現場をよく観察すると、理由が見えてきました。
乾季でも雨は降る。少し雨が降るだけで湿度が高くなり、晴れても洗濯物が乾ききらない。
日陰に干すと湿っぽいまま残ってしまいます。
さらにフィリピンはまだ人口ボーナスが続いており、大家族が当たり前の文化です。洗濯物の量は、日本の比ではありません。
現地に行かなければ、この現実は見えませんでした。
「南国だから乾燥機は不要」という思い込みが、潜在ニーズを完全に覆い隠してしまっていたのです。
エスキモーに冷蔵庫:潜在ニーズを掘り起こす思考法
「エスキモーに冷蔵庫を売る」という話があります。
一見すると「極寒の地に冷蔵庫は不要」に思えます。
外に食材を置けば自然に冷えるのですから。
しかし実際は、食材が凍りすぎてしまい、食べたいときにすぐ使えないという問題があります。
「凍らせすぎないための冷蔵庫」として需要が生まれるのです。
南国の乾燥機も、エスキモーの冷蔵庫も、構造は同じです。
「常識的に考えれば不要なはず」という思い込みを外したとき、初めて潜在ニーズが見えてくる。
そのニーズは現場に行って初めて確認できるものです。
潜在ニーズを掘り起こすには、次の3つが有効です。
① 思い込みを自覚する「このお客様にはこれが必要なはず」という仮説を持ちながら、同時に「自分の思い込みかもしれない」と疑う視点を持つ。
② 現場に足を運ぶお客様の職場や現場に実際に入り込み、自分の目で見る。データや報告書には映らない「空気感」や「体温」を感じ取る。
③ 「なぜ」を繰り返す見えた事実に対して「なぜそうなっているのか」を繰り返し問いかける。フィリピンの例なら「なぜ乾季なのにコインランドリーに人が集まるのか」を問い続けることで、本質的なニーズが見えてくる。
IBM法人営業25年が確信する、潜在ニーズの発見法
IBMで25年間、1,500件以上の案件に携わってきた経験から確信していることがあります。
お客様が「言葉にできていないニーズ」こそが、最も価値ある提案の種だということです。
お客様は、自分が何を欲しいかを必ずしも言葉にできるわけではありません。
「もっと効率を上げたい」という表面的な言葉の奥に、「部下が自分で考えて動けるようになってほしい」という本質的なニーズが隠れていることがあります。
それを引き出すのは、データや分析だけではなく、現場に足を運んで得た「体感」です。
IBMの営業が大型案件で成果を出し続けてきたのも、お客様の現場に入り込み、言葉にならないニーズを仮説として形にし、提案という形でお届けしてきたからです。
AI時代でも現場に足を運ぶエンジニアが選ばれる理由
AIがどれほど進んでも、ネットで情報を調べることはできても、生活の空気感や、現場の体温は、画面には映りません。
フィリピンのコインランドリーの前に集まる人々の表情、蒸し暑い空気の中で洗濯物を待つ時間の感覚。
それはどんなデータにも記録されません。
しかし、そのリアルな体験が「乾燥機のニーズがある」という仮説を生み、深いインサイトにつながります。
お客様の現場に足を運び、目で見て、耳で聞き、空気を感じる。
そこから生まれた仮説を持って提案に臨む営業やエンジニアは、AI時代でも必要とされ続けます。情報は検索できても、体験は代替できないからです。
あなたのチームに、お客様の現場に足を運んで「言葉にならないニーズ」を拾ってくる習慣はありますか。
その習慣こそが、AI時代でも選ばれる提案組織の基盤になります。
お客様に選ばれ続ける提案の作り 方を、セミナーで具体的にお話ししています。ご興味のある方はぜひご参加ください。→ https://semican.net/event/nknarts/rdqsgt.html
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