2024年2月12日
即決クロージングが大手企業で通用しないワケ
即決クロージングは、迅速な成果を求める営業手法として知られていますが、大手企業の複雑な意思決定プロセスでは嫌われるだけでなく出入り禁止や門前払いの可能性もあります。このコラムでは何故、大手企業では即決クロージングが通用しないのか説明します。
1 .即決クロージングとは何か?
即決クロージングは、営業活動において顧客に迅速な決断を促し、その場で契約締結を目指す手法です。このアプローチは、製品やサービスの価値を直ちに認識し、購入意欲を即座に行動に移すことをお客様に促します。消費者向けビジネスや単価が安い製品・サービスには効果を発揮しますが、B2B取引の中でもエンタープライズ・大手企業では、通用しないと言っても過言ではないです。理由は検討フェーズ、予算取りフェーズ、実行フェーズなど意思決定プロセスが確立しており、リスク管理の厳格さから、担当者個人の判断で契約することは不可能なのです。また、中小企業や個人においても即決型営業がよく行う、あおり営業や押し売り営業にへきへきしているのも事実です。その結果として営業職のイメージも悪化させてしまっております。売り側もメンタルをやられて休職せざるを得なくなるなどマイナスしかないというのが事実です。
2 .大手企業の意思決定構造の特徴
大手企業の意思決定プロセスは、その規模と複雑性により、多層的かつ時間を要する特徴を持ちます。これらの企業では、決定を下す前に、複数の部門や階層を通じて幅広い検討が行われます。担当者、担当部門の部長、役員、財務、法務、経営層など、異なる専門知識を持つステークホルダーが関与し、提案された製品やサービスが企業の長期的な目標や戦略に合致するかを評価します。このプロセスは、リスクを最小限に抑え、最適な決定を行うために重要ですが、その結果、即決クロージングのような提案活動ではどんなに努力しても成約は不可能となります。大手企業との取引においては、意思決定構造を理解、仕事の進め方の理解、それに合わせた長期的な関係構築と戦略的なアプローチが成功の鍵となります。
3 .リスク管理
大手企業では、リスク管理と品質保証が極めて重要な優先事項とされています。これらの企業は、新しい製品やサービスを採用する際に、潜在的なリスクを詳細に評価し、総合的な判断で購入の可否を決定します。。リスク評価のプロセスには、自社で利用するにあたっての費用対効果、スイッチングコスト、法的遵守、セキュリティ、および財務への影響が含まれます。これらのプロセスを踏んで、意思決定を慎重に時間をかけて丁寧に行うことにより、企業の長期的な成功と持続可能性のための投資判断が可能となります。
4. 信頼と価値の提供に基づく営業アプローチ
大手企業とのビジネスでは、信頼の構築と価値の提供が中心となる営業アプローチが求められます。即決クロージングが短期的な成果に焦点を当てるのに対し、このアプローチは長期的な関係性の構築と相互理解の深さに重点を置きます。法人営業の担当者は、顧客のビジネスモデルを理解し、その課題や目標に合わせてカスタマイズされたソリューションを提案することで、顧客に実質的な価値を提供します。このプロセスには時間がかかるものの、顧客との信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを構築する上で不可欠です。大手企業では、このような深い関係性から生まれる相互の理解と信頼が、ビジネスの成功において極めて重要な要素となります。したがって、信頼と価値の提供に焦点を当てた営業戦略が、大手企業との取引においては必須となります。
5. 中小企業でも即決クロージングが嫌われる理由
中小企業は、その規模からすると迅速な意思決定が可能なように思われがちですが実は即決クロージングが好まないお客様は多数います。理由は大手企業と同じで、きちんとした検討と慎重なリスク評価を重視しているからです。即決クロージングは、必要な情報収集や検討の時間させないように結論をせかさせます。つまり長期的なビジネス関係を結びたいという意思がなく営業側の自分本位でしかないのです。また、中小企業は限られたヒト・モノ・カネを最大限に活用する必要があり、一つの決定が企業全体に大きな影響を及ぼすことが多いため、自社のことをよくわからない人からその場で投資を決めるようなことはしないのです。つまり、中小企業においても即決クロージングよりも、相互理解と信頼を基盤とした提案活動を真摯に行う営業から購入する傾向が強いです。
6. 即決営業が離職率が高い理由
即決営業を行う営業パーソンは短期間で成果を上げる・売上げをあげることに重点を置くため、常に高いプレッシャーを感じながら働くことになります。会社や上司からの目標達成に対するプレッシャーが大きくなればなるほど、長時間労働・お客様への過度な押し売りの傾向が強くなり、メンタルヘルスの問題へとつながることがあります。さらに、即決クロージングのアプローチは、お客様との関係構築において短期的な視点しかないため、営業パーソンは自己の価値や仕事の意義を疑問視するようになることも多々あります。これらのストレス要因は、仕事に対する充実感・達成感の低下による収入の減少です。その結果として高い離職率に繋がります。企業は営業パーソンの心のサポートをし、健康的な労働環境を提供することで、これらの問題に対処する必要があります。
即決で契約を迫られる、しつこい営業活動をされることは、大手企業だけでなく中小企業や個人でも気持ち良いものではありません。単に製品やサービスを売るのではなく、個々のお客様と向き合い、目の前のお客様をハッピーにする営業パーソンが成功の近道です。売り逃げではなく、お客様の幸せ、長期的な関係構築に重点を置き、営業活動を行うことが重要となります。
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