2025年4月21日
なぜ研修だけでは営業は育たないのか?

営業研修を行なっても現場の行動が変わらない。
多くの経営者や営業マネージャーが抱えるこの課題に対して、営業パーソンの「やる気が足りない」「定着しない人材が悪い」といった他責で片付けていないでしょうか?
実は、これは個人の資質ではなく、育成の“仕組み”が整っていないことが根本原因です。
本記事では、研修だけに頼らない営業育成の考え方と、成果を出し続ける組織に共通する「仕組み設計」の重要性について、事例や実践例を交えてご紹介します。
第1節:なぜ「研修だけ」では成果が出ないのか?
営業研修は、スキルや知識を学ぶための重要な機会です。
しかし、多くの企業では「研修をやって満足してしまう」状態に陥っており、現場での行動変容に結びついていません。
例えばある企業では、「非常に満足」という評価を得た営業研修を行ったにもかかわらず、研修後2週間で約70%の参加者が内容をほぼ忘れていたという調査結果が出ました。
これは心理学でいう“エビングハウスの忘却曲線”が示すとおり、人は学んだことをすぐに忘れてしまうからです。
つまり、研修は入り口であり、本番はその後の「定着・実践」のプロセスなのです。
第2節:「学びを定着させる仕組み」が営業力を変える
では、どうすれば研修内容を現場で生かせるようになるのでしょうか?
答えは、「実務で繰り返し活用する仕組み」をつくることです。たとえば:
月2回の実案件を用いたロールプレイ
4半期に一回のアカウントプランニングセッションの実施
フィードバックシートによる営業活動の内省
成果が出た事例の共有ミーティング
これらはすべて、“研修で学 んだこと”を「使う」ための環境整備です。
実践と内省を繰り返す中でこそ、営業パーソンの行動は変化し、習慣化されていきます。
第3節:スポーツと同じ、「試合=実務」が人を成長させる
この考え方は、スポーツにおける「練習と試合」の関係に近いものがあります。
どれだけ良いコーチがいても、実戦(=お客様との商談)に出なければ、スキルは磨かれません。
緊張感の中でのアウトプット、失敗からの学び、仲間とのフィードバックがあってこそ、プレイヤーは真に強くなっていきます。
営業も同様です。研修で教えた“仮説提案”を現場で実行する場がなければ、定着も成長も起こりません。
逆に、「本番の機会」と「リフレクションの機会」をセットにして継続すれば、成果は必ずついてきます。
第4節:成果を出す営業組織が必ず持っている「育成の仕掛け」
営業パーソンの育成に成功している企業には、共通した特徴があります。それは、「育成の仕掛け=セールスイネーブルメントの設計」が存在していることです。
IBMをはじめとした外資系企業では、以下のような仕組みが日常に組み込まれています
アカウントプランニングセッション(APS)
1on1でのコーチング型マネジメント
セールスサイクルごとのKPI設計と進捗レビュー
営業同行フィードバック
これらはすべて、「誰がやっても一定の成果を出せる」ようにするための仕組みであり、トップ営業だけに依存しない組織づくりを可能にします。
第5節:研修を“点”で終わらせず、“線と面”で育成に活かす
「研修だけで営業が育たない」のではなく、研修を“単体のイベント”として扱っていることが問題なのです。
重要なのは、研修を起点として、現場での実践、マネージャーによるフォロー、定期的な振り返りといった“線と面”での連携を構築すること。
つまり、研修→実務→フィードバック→改善というサイクルが組織の中で回る仕掛けを用意することです。
このような仕組みがあるだけで、研修の効果は何倍にも跳ね上がります。
まとめ:仕組みがあれば、営業育成は「再現性のあるプロセス」になる
営業育成は“人に任せる”ものではありません。仕組みさえあれば、誰がやっても、一定の成果が出せるようになります。
だからこそ、企業が今取り組むべきは、「研修をどうするか?」ではなく、「学びを実務にどうつなげるか?」という育成の設計なのです。
研修だけで終わらせない――その一歩が、営業組織を劇的に強くします。