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2025年7月11日

一流の営業と普通の営業の決定的な違い

一流の営業と普通の営業の決定的な違い
第1節:才能という幻想。「一流の営業」が見せる姿の裏側

私たちは、華々しい成果を上げる営業パーソンを見ると、プレゼンテーションの巧みさや、お客様との円滑なコミュニケーション能力といった表面的なスキルに目を奪われがちです。


そして、それを「営業センス」や「才能」という言葉で片付けてしまいます。


しかし、それは物事の一面に過ぎません。


私の周りのトップクラスの成果を出し続けていた先輩や同僚、必ずしも社交的で話が上手いタイプばかりではありませんでした。


むしろ、彼らが共通して持っていたのは、お客様の前に立つまでの「見えない時間」における圧倒的な準備量、つまり「徹底力」でした。


例えば、普通の営業が顧客のウェブサイトを数ページ見て商談に臨むところを、一流の営業は次のような準備をしています。


  • 公開情報の網羅的分析:決算短信や中期経営計画を読み解き、企業の戦略的な方向性や課題を完全に把握する。


  • 業界・競合の動向調査:顧客が置かれている市場環境や競合の動きを分析し、顧客自身も気づいていない潜在的なリスクや機会を特定する。


  • キーパーソンの背景理解:商談相手となる役員や担当者の過去の経歴、発言、関心事を過去のインタビュー記事から徹底的にリサーチし、個人のミッションや課題を推測する。


これらは、決して特別な能力を必要としません。しかし、この地道で泥臭い作業を「ここまでやるか」というレベルで実行できている営業は、驚くほど少ないのが現実です。お客様が抱える課題の解像度が、準備の段階で全く異なっているのです。一見すると華やかに見える「才能」とは、実はこうした徹底的な準備に裏打ちされた「必然」の結果なのです。


第2節:凡事を徹底する力。仮説検証こそが提案の質を決める

徹底的な準備によって得られた情報は、それだけでは価値を生みません。一流の営業は、その膨大な情報を基に、お客様の成功に繋がる独自の「仮説」を構築します。

「このお客様は『コスト削減』を課題に挙げているが、本当の目的は、それによって生まれたリソースを新規事業開発に投資することではないか? であれば、単なるコスト削減ツールではなく、将来の事業拡大まで見据えた拡張性のあるシステムを提案すべきだ」

このように、顧客の言葉の奥にある本質的な課題(インサイト)を突き止め、それに対する解決策の仮説を立てる。この「仮説検証プロセス」こそが、提案の質を決定的に左右します。普通の営業が顧客の要望に応える「御用聞き」に留まってしまうのに対し、一流の営業は、顧客自身も気づいていない未来像を提示する「ビジネスパートナー」となるのです。

さらに、彼らの徹底力は「シナリオプランニング」にまで及びます。

  • 提案シナリオの複数用意:立てた仮説に基づき、松竹梅のように複数の提案シナリオを用意し、それぞれのメリット・デメリットを明確にする。

  • 想定問答の準備:提案内容に対して想定されるあらゆる質問や反論をリストアップし、それらに対する論理的な回答を準備しておく。特に、CFOからは費用対効果を、現場責任者からは運用の手間を、といったように、相手の立場によって異なる懸念点を先回りして解消する準備を怠りません。

このレベルの準備があれば、商談の場でどんな不測の事態が起きても、自信を持って冷静に対応できます。その落ち着いた態度と、質問に対する的確な回答が、顧客からの絶大な信頼に繋がるのです。


第3節:組織の成長を阻む「属人化」という病

さて、ここで多くの組織が直面する大きな問題について触れなければなりません 。それは、これらの「徹底力」が、特定の個人の資質や努力に依存してしまっている「属人化」の問題です。


一人のスタープレイヤーがチームの売上の大半を稼ぎ出している、という状況は、一見すると頼もしく見えます。しかし、経営的な視点で見れば、これは非常に脆弱でリスクの高い状態です。

  • 退職・異動のリスク:そのスタープレイヤーが退職・異動してしまえば、チームの売上は一気に落ち込みます。

  • ノウハウの非共有:彼らの成功の秘訣が「ブラックボックス化」し、他のメンバーに共有・伝承されないため、チーム全体のスキルが底上げされません。

  • 若手の成長機会損失:若手や中堅のメンバーが「あの人だからできる」と諦めてしまい、成長意欲を失う原因にもなります。

  • マネジメントの限界:マネージャーは、成果の出ていないメンバーの指導に追われる一方で、スタープレイヤーのやり方には口を出しにくく、結果としてチーム全体のパフォーマンスを管理できなくなります。

「営業は個の力だ」という考え方は、もはや現代のビジネス環境には通用しません。安定的に成長し続ける強い営業組織を作るためには、個人の「徹底力」を、組織全体で再現できる「仕組み」へと昇華させる必要があります 。



第4節:セールスイネーブルメントによる「成功の仕組み化」

個人の才能に依存した属人的な営業スタイルから脱却し、組織全体で「徹底力」を実装するための具体的な解決策が「セールスイネーブルメント」です 。


セールスイネーブルメントとは、単なる営業研修のことではありません。営業担当者が継続的に成果を出し続けるために必要な情報、ツール、プロセス、そしてコーチングの仕組みを、会社として戦略的に提供し続ける取り組み全体を指します 。


具体的には、以下のような仕組みを構築します。

  1. ナレッジマネジメントの整備:過去の成功事例、提案資料、競合情報、顧客の業界情報などを誰もが簡単にアクセスできるデータベースに集約します。これにより、準備にかかる時間を大幅に短縮し、情報の質を平準化します。

  2. 営業プロセスの標準化:一流の営業が行っている「情報収集 → 仮説構築 → 提案 → クロージング」といった一連の流れを「型」として定義します。これにより、誰もが成功への最短距離を走れるようになります。

  3. コンテンツの戦略的提供:顧客の検討フェーズごとに最適な提案資料や事例紹介、導入効果の試算シートなどをマーケティング部門と連携して用意します。営業担当者は、コンテンツを探す手間なく、提案活動そのものに集中できます。

  4. データに基づいたコーチング:営業活動をデータで可視化し、マネージャーが「なぜ成果が出ないのか」というボトルネックを具体的に特定できるようにします。これにより、「頑張れ」といった精神論ではなく、的確なスキル指導が可能になります。


セールスイネーブルメントを導入することで、営業担当者は「何を」「どのように」準備すればお客様に価値を届けられるのかを明確に理解し、自信を持って行動できるようになります。結果として、チーム全体の提案力が底上げされ、組織として安定的に高い成果を出せるようになるのです。


まとめ 


今回は、一流の営業と普通の営業を分けるものは、先天的な「才能」ではなく、後天的に鍛えられる「徹底力」であること、そしてその徹底力は、個人の努力だけに頼るのではなく、「セールスイネーブルメント」という仕組みによって組織全体に実装できることをお伝えしました。

あなたの組織は、今もなお、一部のスタープレイヤーの個人的な頑張りに依存し続けていませんか? 営業メンバーが、何から手をつけていいか分からず、準備不足のまま不安な気持ちで商談に臨んではいないでしょうか。

一流の営業が行っている「徹底」は、特別なことではありません。しかし、それを組織の標準とすることは、企業の競争力を根底から変えるほどのインパクトを持ちます。

営業の属人化から脱却し、誰もが顧客から信頼され、高い成果を上げられる「勝てる営業組織」への変革。その第一歩は、自社の現状を客観的に把握し、どこに課題があるのかを明らかにすることから始まります。

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